
生物資源を原料としてオールバイオプロセスで微生物合成される生分解性バイオプラスチックであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、新たな環境調和材料として注目されています。PHAは、バイオマス由来の糖や油を原料として生合成することが可能で、国内でも一部の化学メーカーからすでに販売されています。近年、原料コストの削減や、製造?加工場で生じる副産物を処理できるといった廃棄物レスなどの相乗効果を加味して、従来は廃棄物とされていた物質をPHA合成の原料とする様々な試みがなされています。本研究では、しょうゆ製造過程で副産物として生じ、使用用途の限られていたしょうゆ油を、PHA合成の原料とすることを目指しました。
本成果は、2025年11月26日にヤマモリ株式会社よりプレスリリースされました。 プレスリリース(ヤマモリ株式会社Webサイト)
本成果は、本学の山田教授と芝崎祐二教授、ヤマモリ株式会社、東京農業大学?前橋健二教授、眞榮田麻友美助教(現?佐賀大学)との共同研究によるものです。
代表的なPHA合成菌であるCupriavidus necatorは、様々な原料からPHAを生産できます。しかし、これまでにしょうゆ油を用いた報告はありませんでした。本研究では、本菌がしょうゆ油を含む培地で典型的なPHAであるpoly(3-hydroxybutyrate) [P(3HB)]を合成できることを示しました。さらに、本菌の遺伝子組換え株は、しょうゆ油を含む培地で加工性の高いPHAであるpoly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate) [P(3HB-co-3HHx)]を合成できました。 P(3HB-co-3HHx)の生産性と、P(3HB-co-3HHx)中の3HHx分率は、他の植物油を用いた場合の結果とほぼ同等でした。また、合成されたPHAの分子量と熱特性も、一般的なPHAと同等でした。よって、本研究では、しょうゆ油がバイオプラスチック生産の持続可能な原料として利用できることを示すことができました。
本成果を基盤として、PHA合成菌の遺伝子組換えや、大スケールでの最適な培養条件を検討してPHA生産性を工業化レベルまで向上させることで、しょうゆ油を原料としたPHA合成法の実用化を目指します。
題目:Microbial production of polyhydroxyalkanoate from soy sauce oil, a byproduct of soy sauce manufacturing
著者:Miwa Yamada1, 2, 3*, Munenori Hayashida1, Miwa Abe1, Yuji Shibasaki2, 3, 5, Mayumi Maeda4, Kenji Maehashi4, Masaori Uyama6 and Takafumi Miyake6
1Department of Life Sciences, Studies in Molecular Biology and Biochemistry, Iwate University
2Agri-Innovation Center, Iwate University
3Center for Sustainable Materials and Interfacial Science (CSMIS), Iwate University
4Department of Fermentation Science, Tokyo University of Agriculture
5Department of Chemistry and Biological Sciences, Faculty of Science and Engineering, Iwate University
6Yamamori incorporated
誌 名:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
公表日:2025年10月30日(オンライン)
DOI:https://doi.org/10.1093/bbb/zbaf157